INTERVIEWインタビュー

山元タイムとは2012年より継続的な交流があり、今回もコラボグッズやワークショップでご協力いただいたのをきっかけに、YOHと山元タイムを代表して山下さんとの対談が実現しました。

山元タイムとは、東日本大震災で被災した宮城県山元町のお母さんたちによるプロダクトです。▶ LOVE FOR NIPPON

ー まずはORANGE RANGEと山元タイムの出会いからうかがえますか?

山下
確か山元タイムが始まったのが、2012年の7月だったと思います。
YOH
僕らと最初に会ったのは、その年の秋でしたよね?確か幼稚園に行った記憶があります。
山下
そうですね。幼稚園は二カ所をまわって、 園長先生のお話も聞いて……。その間に私の自宅に来ていただいてミサンガを作ったと思います。その時に確か“はらこ飯”があったので季節的に秋口ですね。
YOH
そうでしたね。そこで初めてコラボの話が進んでいたミサンガ作りの作業に触れさせていただいたんですよね。
山下
そうそう。みなさんにミサンガのチャームと糸を選んでもらって作ったんですよね。
YOH
普段なかなかできない貴重な体験をさせていただきました。自分でも作ると愛着が湧くというか、そこで初めて自分自身におとし込めますよね。現地に実際に足をはこんで、見て、聞いて。いろいろ吸収できて良かったです。

ー それがsparkのツアーで販売をした第一弾のミサンガですね。ちなみにメンバーの印象はいかがでしたか?

山下
個性がすごいな~って思いましたね。ミサンガのチャームや糸の色を選んでいた時も「へ~!そうなんだ!」って思ったりしました。
YOH
(笑)。

ー それぞれ全く違う感じになりましたもんね。

山下
そうですね。実はこんなに長く活動を継続してくれているのはORANGE RANGEさんが初めてなんですよ。
YOH
そうなんですね。

ー それをきっかけに、2015年にはメッセージプレートのついたミサンガ第二弾が発売になり、更にハイビスカスたわしの販売もスタートしました。

YOH
毎回仙台をはじめ、東北の公演では山下さんたちにも直接会場で販売していただいたりして、本当にありがたいです。この機会を通して、ミサンガを編むってこんなに難しいんだって体験してみて知れたしね。
山下
でもみなさんよく出来てると思いますよ。ただ「キレイに編む」っていうのが難しいんですよね。あれはカンボジアの地雷で被害を受けた方々が作った綿を使用しているんですね。地雷を撤去した場所を綿畑にして、それを収穫し販売して生計を立てているんです。そういう物なので、とても切れやすいし太さも均一じゃない。それらを同じ太さに縒ってからの編む作業なので、編み始める前の準備がとっても大変なんです。
YOH
編み始める前に揃えるところから始まるんですね。それはすごく手間がかかりますね。

ー 山下さんがみなさんに声をかけて、たわしなどを作り始めたのはどのタイミングだったんですか?

山下
最初はボランティアをしようと思っていた所に支援員の募集があって、とにかく人がいなくて困ってるから「すぐに来て欲しい!」って言われて行ってみたら、仮設住宅のお家を一軒一軒まわる仕事だったんです。まだその時は3人しかいなかったので、毎日1030世帯に3人で物資を配ったり、みんなの健康状態のリストを作ったり、お米を運んだりもしたのでとにかく真っ黒になりながら毎日重労働を行ってました。そんな中、仮設住宅にみんなが入って落ち着いた頃、今度はおばあちゃんたちから「夜眠れない」とか「暗くなるのが怖いから電気も消したく無い。だから眠くなるまでやれる何かが欲しいって」言われて、針は危ないから編み物を教えたのが最初だったと思います。おばあちゃんたちはみんな農家の人たちなので編み物を出来る人が少なかったんですよね。ちょうど私はパッチワークを教えていたりしていた事もあって教えたのがきっかけです。
YOH
そうだったんですね。
山下
だから1日何十個も出来上がってましたね。そのうちにそれを「販売したい」って言ってくださる方が出てきたんです。でも販売するにはチェックだったりパッケージにする作業が必要になるじゃないですか。しばらくそれを私一人でやっていたら(自分の)負担がすごくて……。その途中でJUNEさん(Candle JUNE)と知り合って、もっと効率のよい方法を聞いたりして続けていました。

ー 元々販売するつもりでスタートしたわけじゃないから、なかなかそこまで頭がまわらないですよね。

山下
そうですね。私もそんなに続くものじゃないと思っていたし、何なら一回限りって思っていたので。それでも長野県の老人ホームのイベントで「売りたい」って言われたのが最初で、それを見た他のボランティアさんたちが「私も欲しい」って言ってくださったみたいで。それからNPOの方たちも「今度東京のイベントで売りたいです!」となり……。

ー 急に色んなところからオーダーがきてびっくりしたんじゃないんですか?

山下
その当時は忙しすぎて、とにかく作る事で精一杯でした。「え!?何千個!?」みたいな感じだったので(笑)。その当時、私のところに登録していたおばあちゃんたちは67名だったんですけど、日々やってましたね。私は引き続き昼間は仮設をまわる支援員もやっていたので、その時にたわしを回収したりしていました。その後、ちょっと体調を崩してしまって全く声が出なくなり、約一年で支援員のお仕事を辞めなくてはならなくなって……。それで「少し環境を変えないと本当に声が出なくなってしまうよ」って言われて、それからJUNEさんたちと一緒に活動(LOVE FOR NIPPON)をする事にしました。

ー JUNEさんと一緒に活動をするようになったのがきっかけで、今はORANGE RANGEのグッズを作る事になるなんて……。

山下
夢にも思っていなかったです(笑)。
YOH
(笑)。

ー 実は今回、テレビズナイトでお客さんに配布するリストバンドも、山元タイムのみなさんが制作をされたんですよね?

山下
はい。まずは素材をはんだごてで裁断するところから始まって、でもそれも手作業なのですごく時間かかるんです。まさに今この時間も山元タイムでお母さん方が作業をしてくれています。それもすごく難しい作業なので、全員がカットの作業を出来るわけでは無いんです。更に新商品の製作も始まっていて、このバックも作っているので、まさに今フル回転ですね。

ー なるほど。そしてそのリストバンドの素材は『RWD← SCREAM 017』のバックドロップの生地を再利用しているということなんですね。

YOH
そう。素材である生地に『RWD← SCREAM 017』のステージを支えてくれたバックドロップを使うことでそのツアーに参加してくれた人、関わってくれた人達のポジティブな気持ちもこのリストバンドに込められるし、その制作を震災以降、長く関わらせてもらっている山元タイムにお願いすることで東北で生まれた縁も地元沖縄市に繋げられる。そういう人と人の繋がりにもスポットをあてときたいというか。その方がイベントにも意味合いが宿ってくるし絶対いい日になると思うんですよ。テレビズナイトはそういうひとつひとつの蕾が花咲くような場所にしていきたいんです。

ー 『UNITY』のツアーではまた新しい商品を販売する事になりました。先日の東北公演で打ち合わせをさせていただいて、今日そのサンプルを持ってきていただいています。

YOH
おお!すごくキレイにプリントされてますね!これはツアーグッズなんですけど、まずはテレビズで先行販売をする事になりました。
山下
出来はいかがですか?
YOH
ばっちりですね!
山下
私もすごくいい物ができたなって思っています!このハイビスカスデザイン、位置が五角形になっていてすごく可愛いですよね。

ー このプリントも山下さんの所で作業されているんですよね?

山下
はい。(デザインの)シルク版だけいただいて……。
YOH
どこで作業されてるんですか?
山下
あの自宅です(笑)。
YOH
えー!
山下
まず生地の反物が届いて、裁断、シルク版のプリント作業をし、乾かしてから縫い始めるんです。
YOH
それってすごく場所を取るんじゃないですか?
山下
そうですね。だから一回に30枚ぐらいしかプリント出来ないんです。
YOH
俺もやった事あるんですけど、プリントする作業ってすごく力がいりますよね?
山下
はい。インクもかなり重いですし……。
YOH
そう!思っていたよりぼってりしてるんですよ。垂らすとボトッ!ボトッ!て感じで。
山下
山元タイムのメンバーには昔そういった職場に勤めていた人もいて、すごくキレイにやってくれるんです。さらにこの作業はこれまでに何千枚もやってますから、技術は上がっていると思います。去年作ったトートバックは2000枚作りましたけど、裏表あったので、計4000回刷った事になるんですよね。ツアー中の半年間はすごい事になっていました(笑)。

ー こうやって山元タイムさんと共に続けてきた結果、また新しい物が生まれたりするのっていいですよね。

YOH
うん。もちろん現地にも行くけど、こういったグッズは俺たちと一緒にツアーをまわっているから、東北がより近くに感じられるんだよね。その都度その都度で形態は変わるかもしれないけど、こういった活動はこれからもずっと続けていきたいなって強く思っています。
山下
私はORANGE RANGEさんのライブ会場へ販売に行った時に、山元タイムで作ったグッズを持っている方には声をかけて写真を撮らせてもらったりしました。
YOH
そうなんですね。
山下
トートバックにRYOさんのイラスト缶バッチをたくさんつけてくださっている方もいましたね。そうやって実際に使ってくれている姿を見るのも嬉しいです。

ー ツアーグッズに手作りの商品があって、それを量産するってすごい事だと思うんですが……。

山下
そうですね。おかげでどんどん仕事が出来るようになってます(笑)。作業している人たちの年齢層は高いんですけど、これまでやってきた仕事を活かしている方もいて、助かっています。
YOH
実際このグッズはお母さんたちがすごく柔らかな雰囲気で作業をして仕上げていくみたいなイメージが先行すると思うんですけど、お話をうかがっていると物作りに対して「いやいやもっとできる!もっと色々な仕様で作れる!もっと転がっていけるんだよ!」っていう気持ちがすごく伝わってくるんですよね。物事に対するパワーとかやり遂げようとする力がすごくて、こちらが力をもらっている部分もあるんですよ。
山下
ありがとうございます。私がこういう事言うとみんなに怒られちゃうんですけどね。「いやいや!こんなのできないから!」って(笑)。でもみんなが知らない事はもちろん私も教えて出来るようになってもらいます。やり始めは「えー!」って思った事でも、やっているうちにすごくスキルアップした気持ちになってるんじゃないかなって思います。だってタイ出身の方もいるんですけど、これまで毛糸なんて触った事もなかったんですよ。
YOH
へ~!そうなんだ。
山下
なので仮設住宅で「私が教えるから一緒にやろう!」って誘ったのが始まりで、今はもう一番厳しいチェックをする人になりましたから(笑)。
YOH
メンバーも個々にキャラクターがあるけど、お母さんたちもそれぞれキャラがあって楽しいですよね。

ー そういう事も理解すると、さらに山元タイムで作られたグッズたちに愛着が湧きますよね。

YOH
どこか大きな会社がやっている物ではないしね。でも、アイテムが売り場に並んでいるだけじゃ作られた経緯やお母さんたちの様子はなかなか伝わらないから、今回こうやって山下さんにお話を聞く事ができて良かったです。すべてを機械に任せるのではなく、実は自分たちと変わらない人たちの手作業が加わっているっていうのを意識してみると、その商品の良さがきちんと伝わるのかなって思います。
山下
ありがとうございます。
YOH
山元町の事も少しうかがえますか?いちごがすごく有名なんですよね?
山下
そうですね。元々いちご農家が多かったんです。ただいちごは浜沿いの砂地が一番よく育つので、津波で98%の農家さんが被害に遭われてしまったんです。2軒の一部の苗だけが助かったと聞いています。震災後は、もう地面で育てる事は出来ないので(塩害などで)プランターや水耕栽培を条件に作られている方が増えました。昔から育てていた方は高齢になってきたので一から始めるのが難しいんですけど、息子さんの代とか新しい方たちが会社として立ち上げたところがあって、今までの人たちがちょっとずつ指導したり、コンピューター管理を導入したりして、少しずつ増え始めました。最近は夏いちごっていうのを始めているところがあって、来年あたりには夏にいちご狩りができるようになると思います。新しい品種なんですけど、ぜひ夏にいちご狩りをしに来て欲しいです!
YOH
僕らも現地で食べさせてもらったけど、本当に大きくて美味しかったんだよね。

ー 少しずついちご農家も戻ってきているんですね。

山下
そうですね。今年はようやく電車(常磐線)も開通したので、駅のまわりには新しい町が出来始めました。他の交通手段があまり無いので、本当に良かったです。

ー 今は仮設住宅を出られている方も増えてはいると思うんですが、まだみなさんとの交流は続いているんですよね?

山下
仮設住宅を出ても、全くコミュニティーが無い場所にポンッておばあちゃんたちが入れられて……。それでうちのorange house(トレーラーハウス)で週に一回集まって手芸をやっています。そこに来る人たちが増えているのも事実です。でも場所に限りがあって、必要な場所が足りてないですね。その辺も今後は町でなんとかしてもらえたらいいなって思っています。
YOH
そういう今の状況とかも、もっと知ってもらいたいですね。
山下
山元町に限らず、沿岸部ではみんな同じ状況だと思います。それに沿岸部には住めない地域があって、そこは全く手がつけられてないんです。人が住めるところから復興は始まっていくので、だから沿岸部に住んでる方たちはあまり変わらない状況だと思います。

ー なるほど。貴重なお話を聞く事ができたと思います。最後になってしまいますが、今日の感想をお1人ずつどうぞ。

YOH
まだまだ復興は進行形なのに、他の地域ではテレビで見たりするのも少なくなってきてます。とは言いつつもメディアにすべてを託すのも違うのかなと感じる部分もあるんです。とにかく信じる道を進んで、そこから何か生まれていくかもしれないという希望は持ち続けながら活動を継続していきたいです。
山下
そうですね。実際に販売していると「山元町のお母さんたちが作っているんですよね」って聞かれたりとか、手にとってくださった方達との交流の中で「私も山元町出身なんです」って声をかけてくださる方もいたりして……。東北から離れた地でそうやって言ってもらえると嬉しいです。
YOH
そういうシーンを少しでも増やしていきたいですね。これからも引き続きよろしくお願いします。
山下
こちらこそ、よろしくお願いします。

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